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14番目のアルキメデスの立体!?

2000年の時を超えて?

2000年の時を超えて、アルキメデスの立体に14番目の立体が発見されました!!

こういった文章はセンセーショナルで面白いので、目を引きます。文の書き手が「なんとか幾何学・数学に興味を持ってもらおう」と思っていると、とかくこういった文章を書きがちです。そのため、偉人の伝記や、有名人について書かれたエッセイの類いは、ゴシップや作り話、そこまでいかなくても興味をひきつけるための不正確な記事などにあふれています。

不幸にしてアルキメデスの立体に関する混乱も、これが原因と思えます。一般人向けに注目を集める文章を書きたかった数学者が、いささか本質を外れた状態で、こういった文章を書いたせいで混乱してしまっているといえます。

アルキメデスの立体の条件

アルキメデスの立体の条件についてはアルキメデスの立体の定義に、私は3つの条件を述べました。このうち最初の2つの条件は、どの本でも採用されており特に混乱はみられません。混乱が見られるのは、3番目の条件を省いてしまう本が多いためなのです。

例えば、ごくごく簡潔に「同じ正多角形が同じ順番で頂点の周りにあればよい」とだけ書くといった類いです。このように3番目の条件を無視すると、新しく14番目のアルキメデスの立体が見つかってしまいます^^;

それも再三再四発見されてきたのです^^;

繰り返し発見される14番目の立体

ニセ菱形立方8面体は何度も何度も「発見された」といわれ続けてきました。例えば、L. A. Lyusternikによって書かれた1956年の本"Convex Figures and Polyhedra"にこんな文章が載っています。(私が勝手に翻訳したものです。原文は英語です)。

2000年を超える半正多面体の理論に不備があったことは注目に値します。この不備は、近年ソビエトの数学者V. G. Ashkinuzによって発見されました。彼は14番目の半正多面体(ここにニセ菱形立方8面体の絵)を発見しました。この形は、(ここに菱形立方8面体の絵)とは異なっています。違っている点は、5つの正方形と4つ正3角形からなる上部の部分を、45度だけ回転させている点だけです。これまで、これら2つの半正多面体は区別されないできました。

1930年、コグゼター(Coxeter)は菱形立方8面体を作ろうとしたミラー(J. C. P. Miller)が偶然作り間違えて、発見したと書いています。コグゼターが物凄く有名な幾何学者であるためか、このことが割と広く日本では知られています。日本の書物では、よく「ミラーが最初に発表した学者」という記述を見かけます。そのため、ニセ菱形立方8面体のことを日本では「ミラーの多面体」と呼ぶことが多いのです。ただし、Miller's Polyhedron(ミラーの多面体)というと、西洋では通常ぜんぜん別の立体を指すのが普通なので注意が必要です。

しかしこれよりも早く、1905年にダンカン(Duncan M. Y. Sommerville)によって、ニセ菱形立方8面体は説明されているらしいです。

また、ケプラーが著書『正6角形の雪の結晶について』の中でアルキメデスの立体は「14種類である」と述べていると書かれている本もあり、これが本当であるならば━━私は確認を取っていません━━もっと以前から、この形は知られていることになります^^; かなり情報が錯綜しており真偽がよく解りません。

そして更に問題なのが、この立体を14番目として認めるかどうかで、かなり混乱がみられることです。日本の多くの書物が「2000年を超えるアルキメデスの理論の不備が今世紀になってから発見された」という記述のおもしろさから、どちらかというとこれを支持するような書き方を採用しているため、日本語で書かれた書物だけ読んでいると、アルキメデスの立体は14種あるような気さえしてきます。ただ、こういった記述はやはり関心を惹きつけるための工作と考えるべきで、数学の本質とは無関係です。西洋の多くの学者がアルキメデスの立体は13種しかないと考えるのはなぜかを、もう一度下記にまとめておきます。

やはり対称性

頂点周辺の形だけみれば、菱形立方8面体(Rhombicuboctahedron)も、ニセ菱形立方8面体(Pseudo-rhombicuboctahedron)も同じです。

ニセ菱形立方8面体はそれでもアルキメデスの立体には分類されません。なぜならアルキメデスの立体の本質は、局所的な頂点周辺の構造にあるのではなく、その形の全体からでる対称性にあるからなのです。ニセ菱形立方8面体は正4角反柱(1つの4方回転軸、4つの2方回転軸、4つの鏡面対称面)と同じレベルの対称性しか持っていません。一方、菱形立方8面体は立方体(3つの4方回転軸、4つの3方回転軸、6つの2方回転軸、9つの鏡面対称面)と同じだけの対称性を持っています。

菱形立方8面体はどの頂点をどの頂点に重ね合わせても、元の形とぴったり重なります。これがニセ菱形立方8面体だとできません。このように局所的な頂点の構造はどこも同じでも、全体としての均衡がとれていないことを擬似一様(Pseudo Uniform)といいます。全体としても均衡がとれている場合を一様(Uniform)といいます。

最後に・・・・

思っていた以上にこの問題はややこしく、私の知識では何が正しいのかよく解らなくなってしまいました^^;

そして、日本の学者と西洋の学者の言い分を代弁するならば、たぶんこんな感じになるでしょう。

日本の学者:「西洋の学者は13という数字にこだわりすぎである。切頭4面体がイエス・キリストで残り12のアルキメデスの立体は12使徒であるとでもいいたいかのように……。そして立体の定義の中に群論的な対称についての規定は元々ないのだから、後からそういうことをいうのはおかしい」

西洋の学者:「日本の学者は2000年の時を超えて14番目の立体が発見されたというおもしろさにこだわりすぎである。アルキメデスの立体が13であることは、アルキメデスが13個しか見つけなかった時点で明白であり、もし14番目が見つかってしまうなら、定義のほうを修正する必要がある。なぜなら14番目は他の13個と比べて不格好な立体だからである」

準正多面体

日本では準正多面体(Quasi-regular Polyhedron)という単語が、アルキメデスの立体とほぼ同意義に使われることがよくあります。これは学習の上で混乱を招きかねません^^; そのへんの事情を次にまとめていきます。
準正多面体へ ゴーゴー♪